糖尿病予防を確実に行うために

やっと最近になって,糖尿病治療を行っている内科の先生方の中でも糖尿病管理の指標としてHbA1cは信頼性が低く,耐糖能異常など糖尿病準備状態の評価が出来ない問題が指摘され始めました.HbA1cは過去2-3ヶ月間程度の平均の血糖値を見ているだけで,特に問題となる食後過血糖の状態は隠されてしまい異常として見えない点に問題があります.例えば,HbA1cが6%で正常域にあり,糖尿病ではないと診断される場合でも,実際には食事の内容によっては食後血糖値が250-300mg/dlに到達する場合があります.これは明らかに耐糖能異常を来しているわけで,いずれこのような患者さんはいわゆる糖尿病に移行します.しかし,HbA1cだけを指標にしていたのでは,そのような患者でも一見正常に見えるので,過剰な糖質摂取という食事内容に問題があるにも関わらず,その問題を捉えることが出来ないわけです.II型糖尿病は間違いなく「食生活習慣病」であり,過剰な糖質の摂取が原因ですから,炭水化物を含む糖質を適切な量だけ摂取する食生活にすることで,本当の糖尿病発症を防げるはずなのです.残念ながら現代の日本人の食生活は炭水化物への依存度が50~70%程度となっていますから,中年以降特に40歳以降この割合で炭水化物を3度の食事で摂取し,更に間食としてお菓子やスイーツなどを摂取すれば,容易に糖質過剰状態を私達の体内で作ることになります.この過剰な糖質がどうなるかは先日の記事でもお話したとおりです.

 

特に当院で治療した脳卒中患者さんの99%は,糖尿病があるか,耐糖能異常がある状態でその半数以上の患者さんが再発を繰り返します.薬物治療,特に抗血小板剤による治療は「血液をさらさにして,血管が詰まりにくくする」などと説明されることが多いと思いますが,この薬物治療は起きてしまった動脈硬化性病変による狭くなった脳血管や心臓の冠動脈などの血液の流れを助ける一定の効果はありますが,そもそも動脈硬化を引き起こした原因となる(食)生活習慣を病前と同じように続けていたのでは,まさに焼け石に水となり,再発の原因となるのです.

その食生活習慣を改善するための根拠として経時的な血糖値のチェックが有効で、当院では入院中に採血により1日の血糖値の変化を食前後を含めて観察し、耐糖能異常の有無を診断し糖尿病治療に繋げるようにしています。

 

つまり,脳卒中の再発も含めて予防のためには,薬物治療だけでは片手落ちで,食生活の全面的な見直しが必要となります.私達の札幌禎心会病院 脳神経外科 脳卒中センターでは,専門的治療としての薬物治療・脳神経外科的治療のみならず,食生活の改善にも力を入れて指導教育を行っていますので,お気軽に相談してください.